この症例は、40代女性の重度の歯周病と虫歯に対するインプラント治療例です。初診時、患者様は多数の虫歯により口腔内の状態が悪化し、入れ歯以外の治療法を希望されていました。複数歯のインプラント治療を行い、口腔機能の回復を目指しました。治療後16年間の定期的な経過観察により、インプラントの状態と口腔内の健康維持を継続的に確認しています。この長期的な記録は、適切なインプラント治療とその後のケアが、長期にわたり口腔機能を維持できることを示す一例となっています。
術前


2007年初診
- 主訴―虫歯でぼろぼろの口の中を、入れ歯以外の方法で治してほしい。
- 治療方針―上顎はインプラント6本による固定式12本ブリッジの装着。下顎は残存歯8本による固定式延長12本ブリッジの装着
- 治療期間1年半
- 費用―
治療手順
- まず上下のクリーニングと歯磨き指導を徹底的に行う。
- 下の残存歯の歯内療法、早期の歯周外科を施し、仮歯を装着する。同時進行でプチ矯正も行う。
- 上顎インプラントのためのCT撮影、解析を行う。
- 上の残存歯は、すべて抜歯し、骨移植、ソケットリフトを併用したインプラントの埋入を行う。メインのインプラントの間に仮インプラントを4本埋入し、その上に仮歯を装着する。
- 4ヵ月後、仮インプラントを撤去し、メインのインプラントに仮歯を装着し、5ヶ月経過観察を行う。
- 上顎は、チタンフレームのハイブリッドセラミックの上部構造をネジ止めする。(PIB)
- 下顎は、ハイブリッドセラミックのフルブリッジを接着する。(短絡歯列)
- 3か月メンテナンスに移行
術後


術後のコメントー患者さんは、歯がなくなることへの恐怖感から治療を1日延ばしにしていたそうです。そのため、1日でも歯がない状態をつくらずに最終修復物まで進みました。費用の問題もあり、治療期間を有しましたが、患者さんの歯に対する認識は以前とは比較にならないくらい変わったと思います。
7年後


3~4か月の間隔で、ずーとメンテナンスで通われています。画像や視診からも、ほぼ問題なしの状態と言えます。インプラント、残存歯からの出血、排膿認める所はありません。
16年後


16年前に大々的に一度治療したきりです。以降はメンテナンスと歯磨き指導と夜間のマウスピースのチェックのみです。一般的には今回のケースのような虫歯+歯周病混合タイプの患者さんの治療後の予後は悪いとされていますが、幸い患者さんの改心、努力、管理によりほぼ問題が生じていません。しいて言えば、奥のインプラントにおいて若干の水平的な骨吸収が生じていることぐらいですかね。炎症によるものではありません。
また、予後の悪いとされている残存歯による下顎の延長フルブリッジにも何らトラブルは生じていません。これはちゃんと徹底した歯周病治療と歯内療法と適合の良いブリッジを装着したからだと言えます。
同じような結果に導けれる歯科医は少ないと断言しておきましょう。
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