この症例は、50代女性が入れ歯以外の方で咀嚼機能の改善を主訴に来院されたケースです。上顎に8本のインプラントで固定式のブリッジを装着し、下顎は残存歯を活かして固定式の延長ブリッジで咀嚼機能を回復しました。また、上顎の歯を下顎へ移植する治療も行いました。治療後15年が経過(2024年現在)した現在、軽度の歯茎の変化はあるものの、インプラントの状態は良好です。インプラント治療後、定期的なメンテナンスと適切なセルフケアにより、長期的な口腔内の健康が維持されている症例です。
治療前


2009年初診
- 主訴:ものが噛めない、入れ歯以外で何とかしてほしい。
- 治療方針:上顎はインプラント8本による固定式14本ブリッジの装着。下顎は残存歯7本による固定式延長12本ブリッジの装着。(下の残存歯数が少ないので、上の戦略的に抜歯する左上5番の歯を左下3番に移植)
- 治療期間:1年
- 費用:2,998,000円+税(当時)
治療後


治療手順
- 上下クリーニング、歯磨き指導を徹底的に行う。
- CT、模型検査をまず行い、カウンセリングする。
- 上の保存不可能な歯を一時的に治療し仮歯をいれる。下も仮歯を入れながら、根管治療、歯周病治療を並行して行う。上の保存不可能な奥歯を抜歯する。
- 左上5番を左下3番に移植する。
- 上の右奥歯にソケットリフトを併用しインプラントを3本埋入する。
- 1か月後、左上奥歯にソケットリフトを併用し3本インプラントを埋入する。
- 3か月後、メインのインプラント6本を立ち上げ、仮歯を装着する。
- 上前歯を抜歯し、ギャップに人工骨を填入しインプラントを2本埋入する。
- 3か月後、メインのインプラント8本による仮歯を装着する。
- コバルトフレームのセラミックを装着し上は終了。下も残存歯によるフルブリッジを装着する。
- 夜間のマウスピースの着用を指導し、3か月メンテナンスに移行する。
5年後


インプラント、残存歯共に、レントゲン、CT画像上問題ありません。視診による出血や排膿等の歯茎の炎症所見も認めません。しかし、上顎左上3番インプラント部位の歯茎の痩せを認めます。ローリップ(低い唇)のため、患者さんは気にならないとのことです。下顎の延長ブリッジにも特に問題は生じていません。歯磨き、自己管理共に言うことなしです。ただ、夜間のマウスピースの装着を勧めましたが、ご本人の生活習慣上難しいとのことです。
術後15年経過後


2024年になっても、右上3番 左上2番の歯茎の痩せは認めるものの、インプラントには画像視診上、炎症所見は認めません。しかし、左下3番に移植した左上5番の歯根に炎症性吸収を画像上認めるようになりました。ご本人は自覚症状がないとのことで、このまま経過観察することにしました。
このケースはカリエス(虫歯)+ペリオ(歯周病)の混合タイプなので、一口腔の治療、メンテナンスの継続、歯磨き、自己管理、噛みしめ等の習癖改善等、どれ一つ欠けても良好な長期良好予後を得ることは困難だと考えられます。
今後、下顎の残存歯がいつまでもつかがキーポイントです。普通であれば15年前に総入れ歯かフルインプラントだったことを考えれると、費用対効果は抜群だと思います。




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