多数歯欠損インプラント(上顎全部欠損)/50代女性/ノンスモーカー ※症例10

治療前

2009年初診

  • 主訴―ものが噛めない、入れ歯以外で何とかしてほしい。
  • 治療方針―上顎はインプラント8本による固定式14本ブリッジの装着。下顎は残存歯7本による固定式延長12本ブリッジの装着。(下の残存歯数が少ないので、上の戦略的に抜歯する左上5番の歯を左下3番に移植)
  • 治療期間1年
  • 費用―

治療後

治療手順

  1. 上下クリーニング、歯磨き指導を徹底的に行う。
  2. CT、模型検査をまず行い、カウンセリングする。
  3. とりあえず、上の保存不可能な歯を一時的に治療し仮歯をいれる。下も仮歯を入れながら、根管治療、歯周病治療を並行して行う。上の保存不可能な奥歯を抜歯する。
  4. 左上5番を左下3番に移植する。
  5. 上の右奥歯にソケットリフトを併用しインプラントを3本埋入する。
  6. 1か月後、左上奥歯にソケットリフトを併用し3本インプラントを埋入する。
  7. 3か月後、メインのインプラント6本を立ち上げ、仮歯を装着する。
  8. 上前歯を抜歯し、ギャップに人工骨を填入しインプラントを2本埋入する。
  9. 3か月後、メインのインプラント8本による仮歯を装着する。
  10. コバルトフレームのセラミックを装着し上は終了。下も残存歯によるフルブリッジを装着
  11. 夜間のマウスピースの着用を指導し、3か月メンテナンスに移行

5年後

インプラント、残存歯共に、レントゲン、CT画像上問題なし、視診による出血や排膿等の歯茎の炎症所見も認めない。しかし、上顎左上3番インプラント部位の歯茎の痩せを認める。ローリップ(低い唇)のため、患者さんは気にならないとのことです。下顎の延長ブリッジにも特に問題は生じていない、歯磨き、自己管理共に言うことなしです。ただ夜間のマウスピースの装着は難しいとのこと。

術後15年経過後

2024年になっても、右上3番 左上2番の歯茎の痩せは認めるものの、インプラントには画像視診上、炎症所見は認めません。しかし、左下3番に移植した左上5番の歯根に炎症性吸収を画像上認めるようになる。本人自覚症状がないとのことで、このまま経過観察することにする。

このケースはカリエス(虫歯)+ペリオ(歯周病)の混合タイプなので、一口腔の治療、メンテナンスの継続、歯磨き、自己管理、噛みしめ等の習癖改善等、どれ一つ欠けても良好な長期良好予後を得ることは困難です。

さらに、固い歯茎の移植も功を奏すると考えられます。患者さんの負担と費用を考えてやりませんでしたけど、やるべきだったと今思います。

機能インプラントは全くこの方では心配していませんが、下顎の残存歯がいつまでもつかがキーポイントですね。まあ、普通であれば15年前に総入れ歯かフルインプラントだったことを考えれると、費用対効果は言うことなしだと思います。

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