【根管治療症例】 左下一番奥の歯のべろ側の歯茎が腫れてきた。癌じゃないかと心配/左下7番/#43

この症例は、55歳男性の左下大臼歯に対する根管治療の11年間にわたる経過観察を記録したものです。初診時、患者様は歯肉腫脹を訴え、癌の不安を抱えていました。適切な治療により症状は改善し、その後11年間という長期にわたり歯の状態を追跡しています。この長期的な経過観察は、根管治療の効果と歯の保存の可能性を示す貴重な事例となっています。11年間歯を抜かずに保存できたことは、患者様の口腔内の健康維持において重要な成果です

術前

術前パノラマレントゲン写真

概要

  • 初診:2020年、55歳男性
  • 主訴:左下一番奥の歯のべろ側の歯茎が腫れてきた。癌じゃないかと心配
  • パノラマ術前所見―向かって右下一番奥の歯(左下7番)の根っこの先が黒くなっている骨透過像を呈する。
  • 診断:歯髄壊疽による根尖性歯周炎、クラックの疑い
  • 治療法:根っこの治療(歯内療法)、
  • 使用した機器&材料:拡大鏡、超音波、ニッケルチタンファイルシステム、ラバーなしの簡易防湿、ネオクリーナー、RCプレップ、炭酸ガスレーザー、水酸化カルシウム、ガットパーチャー
  • 治療期間:3か月(経過観察こみ)
  • 費用:保険の歯内療法費+自費の被せものゴールドクラウン(当時6万、仮歯とコアこみ)

術前CT前頭断

根っこの先の黒い骨透過像(吸収像)をはっきりと認め、特にべろ側が著しい。そのため、べろ側の歯茎が腫れてきたと考えられる。根っこの治療ができない歯科医にとっては、抜歯のケースと言えるかもしれない。

術前CT矢状断

近遠心的(手間から奥に向かって)に、化膿による根っこの先の大きな黒い骨透過像を認める。手前の左下6番の奥の根っこ(遠心根)の先も化膿していることがわかる。

術後11年後

パノラマレントゲン写真

11年後、当時の主訴であった左下一番奥(7番)の根っこの先の黒くなっている部分は白く改善されているように見える。勿論、患者さんも以前の不都合は訴えていません。しかし、本当に改善しているかどうかは顎骨の内部(海綿骨の状態)を把握できる歯科用CTによる精査でしか正確に判断することは無理です。そのため、歯科医院によって、診断や術後の見解が違うとはっきりと断言しておきましょう。症状は訴えていなかった右上2番(向かって左上2番目)、左下6番(向かって右下奥から2番目)の根っこの先の化膿(透過像)も再根っこの治療で、改善しているように見える。

CT画像前頭断

べろ側の骨吸収像が改善され、固い皮質骨(顎骨の表層の骨)が形成していることがはっきりとわかる。また、根っこの先の透過像も改善されている。

CT画像矢状断

近遠心的(手間から奥に向かって)に、化膿による根っこの先の大きな黒い骨透過像が改善し、白い骨不透過像を呈していることがはっきりと認められる。完治が確認できる。

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