インプラント治療に対する考え
インプラントに限らず、すべての選択肢には長所と短所があります。私が考えるインプラントとは、不幸にも歯を失った際に、残っている歯を守り、健康の維持に不可欠な「咀嚼機能」を支える手段です。寝たきりや大病を想定するのではなく、それを防ぐための選択肢と捉えるべきでしょう。実際、寝たきり状態で残存歯に問題が起こると、さらに大きな負担となることも理解しておく必要があります。もし悲観的に構えるのであれば、あらかじめ全てを抜歯して総入れ歯にするという選択も合理的です。その意味で、インプラントは「快適な人生を送るための一つの手段」と位置づけられます。
統計的にも、総入れ歯の方に比べて、自分の歯やインプラントで咀嚼できる方のほうが長寿傾向にあります。超高齢化社会において、死因上位に誤嚥性肺炎が含まれるのはその一例です。もし将来的に寝たきりを懸念するのであれば、ツーピース型インプラントを選択するのが望ましいでしょう。必要に応じてオーバーデンチャーへ移行することも可能です。また、ごく稀に体質的にインプラントが合わない方もいますが、その場合は撤去が可能です。現在は比較的容易に撤去できるツールも整っており、後戻りができる点も安心材料です。どうしてもインプラントに抵抗がある方は、入れ歯やブリッジなど従来の方法を選べば良いでしょう。ただし、保険治療による金属が多い口腔環境は、長期的に問題を生じやすいことも付記しておきます。いずれにせよ、最終的な選択は自己責任となります。
最後に、もし私自身や家族が歯を失った場合、現時点ではインプラントを第一選択肢とします。移植は選びません。これが率直な考えです。